最も入るのが難しいと言われる最高学府の東京大学よりも、地方の国公立大医学部のほうが競争率が高いと言われるほど、医学部受験は年々難易度を増しています。そう聞くと「入れる医学部ならどこでもいい!」と思ってしまいそうですが、実はその選択が失敗につながるのです。
医学部は大学によって入試科目や出題範囲が異なるため、志望校を早めに絞り込み、入試傾向に合わせて必要な教科を強化することが合格のカギとなります。逆に言えば、志望校の入試に求められない科目や単元は手をつけないぐらいの思い切りが必要です。
では、どうやって大学を選べばいいのでしょうか?国公立と私立に分けて志望校選びのポイントを解説します。
まずは捻出可能な学費目安と現状学力を確認しておきましょう
志望校を決めるに当たって、まずは自分自身の情報を確認する必要があります。
具体的に何を確認するかというと、「学費に捻出できるお金がどれくらいあるか」「現在の学力・偏差値はどれくらいか」の2点です。
保護者の方と学費について相談する
頑張る姿を見せれば、多くの保護者の方は応援するために学費を捻出してくれることが多いでしょう。しかし、現実的にどれくらいの学費が捻出できそうかは重要な検討要素です。
医学部医学科であれば国公立でも6年分の学費がかかりますし、私立であれば他学部とは比にならない学費がかかります。そのため、国公立優先で受験を進めざるを得ない場合もあるため、現実的な学費の確認が必要です。
自宅から通うか、下宿するかも志望校に大きく影響します。
奨学金を利用するかどうかということも検討できるため、保護者の方とお金の相談はしておきましょう。
現在の学力を大まかに把握する
現在の学力を知ることで、現在合格の可能性が高い医学部大学を確認しましょう。
もちろん、これからの受験勉強で合格範囲は広がると思いますが、自分の学力を基準に医学部のある大学を確認することで、より具体的にイメージがつきます。
学力の確認方法は河合塾全統医進模試、駿台全国記述模試などの医学部進学を目指す受験生が多い模試を選ぶと、より正確な偏差値を得ることができます。
どのくらいのレベルの大学を選ぶべきか
受験校のレベルは偏差値でいうと、自分のレベルよりプラス5~10くらい上の大学を選びましょう。プラス5であれば、十分手の届く範囲です。対して、プラス10はかなり気合いを入れて無理をしないといけません。相当意識レベルの高い受験者が集まりますので、彼らと対等に戦うには過去問分析が絶対に欠かせません。志望校の出題傾向を事前に知り、過去問を解きながら時間配分を体感します。
ブランドイメージで決めない
まれに、ブランドイメージから現実を見ずに相当レベルの高い大学を受験する人もいます。しかし、臨床医になるなら、大学のブランドにこだわるより、いち早く医療現場に出るべきです。入学する前から自分の狭い世界で、ここしかない!と思い込みすぎて、その呪縛から解き放たれず何年も浪人して苦しむのは得策ではありません。激化する医学部受験を最短で乗り切るには、自分の身の丈にあった大学を選定することを強くお勧めします。そういう意味で、自分を知ることはとても重要なのです。
国立・私立別医学部の選び方
国立大学医学部の選び方
国公立大学は私立と比べて学費が大幅に安いため、経済的な理由で私立に進めない人は、必然的に国公立を志望することになります。また国公立は研究医の人材育成にも熱心なため、大学院に進学して研究医の道に進みたいと考えている人は、国公立大を選ぶ傾向があります。
その反面、毎年定員にほとんど増減がないため非常に狭き門で、私立に比べても圧倒的に競争率が高いのが国公立の特徴です。大学入学共通テストがありますので、総合的な学力の高さを身につけられるかどうかが最初の壁となります。2次試験では科目数や大学入学共通テストとの配点比率が大学によって異なります。
国公立は全国ほぼ一律の学費ですから、学費面を考慮する必要はないでしょう。あとは志望校の偏差値や難易度を吟味して絞り込み、大学入学共通テストと2次の入試科目の配点比率や、どの科目の組み合わせならより得点を稼げるかを見極めて志望校を決めることが大切です。
私立大学医学部の選び方
私立は大学によって学費や設備、カリキュラムから入試内容に至るまでさまざまで、1年次から積極的に実習を行ったり、個性的な教育システムを導入している大学も少なくありません。臨床医として実践的な力を身につけることができ、将来は開業医をめざしたい人に人気です。
ただ私立大の学費平均は国公立の約10倍以上あり、最も安い大学でも6年間で2000万円以上、最も高い大学では4000万円を超えてきます。医学部の勉強はハードですから、6年間勉強に集中できる経済力があるかどうかで、志望校がおのずと絞られてきます。
また私立大は大学によって入試内容や出題傾向が違うため、自分がどの教科が得意で点数を稼げるのか、苦手科目を避けられる大学はあるか、といった得意不得意で選別することも重要です。入試日もばらつきがあるため、複数校を受ける場合は入試日が重複していないか必ず確認をしましょう。入試日が重複した場合、受験者数が増減する可能性が高いので、入試スケジュールをチェックして、より得意科目で得点が稼げて、受験者数の少なそうな大学を選ぶこともポイントです。
もうひとつ考えておきたいのは、奨学金制度の有無です。奨学金制度を設けている大学には志望者が増える傾向があり、結果的に競争率が跳ね上がります。気になる大学に奨学金制度があるかどうかもチェックしておきましょう。
考慮しておいた方がいい?「医局」とは
医局とは
大学選びについて、考えておきたいことに「医局」の存在があります。医局とは大学医学部にある組織で、教授を中心とした同一診療科医師のグループのことを言います。内科や外科など、各診療科に1つは医局が存在していて、医学部を卒業した生徒の多くが出身大学のいずれかの医局に席を置くのが一般的です。
医局に入ると研修先で先輩医から指導を受けられたり、就職先の斡旋をしてもらえたりと、さまざまな恩恵が受けられます。将来自分が働きたい医局がある場合は、その医局がある大学に進学することも視野に入れましょう。
最近では医局に所属しない選択肢も増えている
ただ最近では、煩雑な業務を任されるなど、面倒なこともついて回る医局に、所属したがらない医師も少なくありません。また2004年からスタートした初期研修の義務化によって、医局に所属せずに研修先を選ぶことが可能になったため、現在では医者の1割ほどが医局に所属せずに活動しているようです。また出身大学ではない医局に入るケースも増えています。
かつては医学部卒業生の100%が入っていたため、大学選びと切っても切れなかった大学医局ですが、今では医局の存在を意識せずに、志望校を選ぶことが可能になっているようです。
1校に決めず、複数校に絞れたらOK
一般に、高校生は受験校を3~5校に限定するケースが多いです。医学部受験は学校ごとに入試問題にかなり特徴があるので、過去問対策をやる時間を考えると、現実的には3校がベストでしょう。それ以上になっても対策をする時間が足りませんし、試験日程を組むのも大変です。たくさん受ければ合格率が高くなるとは限らないのが、昨今の医学部受験というものです。
対して、高卒生は後がないので、受験校を5~10校にすることが多いです。超激戦の私立医学部受験を突破するためには、ある程度まで汎用的な力をつけ、受験校を増やさないと受かりにくいのも事実です。
まとめ
志望校を複数校に絞れたら、早速勉強を開始・再開しましょう。医学部受験は過酷な戦いです、日進月歩、足を止めずに準備を進めていきましょう。
思うように学力が伸びなかったり、目標を見失いそうになったときは、もう一度志望校を検討しなおしましょう。大幅な変更はおすすめしませんが、具体性のない目標を追いかけるくらいなら新しい目標を立てるべきです。
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