医学部受験で小論文・面接試験が課される「真」の理由㉘

近未来における忍者キャラ

近未来における忍者キャラが現代における医師だと言うならば、近未来における主人公は現代におけるどの様な身分の人物なのであろうか? 何の話をしているのか全く分からない方は前回のコラムを熟読して欲しい所ではあるが、存在そのものが煌びやかでこの社会の王道を行く(と少なくとも本人達は信じている)人こそが主人公だとするならば、社会一般における知名度や経済的な豊かさを享受している政治家・経営者・俳優・スポーツ選手・伝統芸能の継承者等が当てはまると考えて間違いはなさそうである。それに引き換え医師という職業は前々回にも書いた通りごく一部の例外を除けば地味そのものであるが、この地味な職業こそが先述の煌びやかな方々を忍者キャラの如く陰からしっかりと支えていると言えよう。
流石に具体的事例を上げる事は避けたいと思うが、前述の主人公に譬えられる職業の方々にはアンチが少なからずいる事も特徴の一つである様に思われる。勿論彼ら彼女らにも同情の余地はあり、知名度が高すぎるが故に、その人物の人となりや活動の詳細並びにその真意をよく知らない市井の人々が、口コミのみならず近年は各種SNS等も駆使して、根も葉もないものも含めた噂話を面白可笑しく拡散したりする為に、彼ら彼女らは有形無形の被害を毎日の様に被っている事も紛れもない事実と言えようが、一方で「火のない所に煙は立たぬ」という諺も一般人が使えるメディアが口コミしかなかった太古より経験的な事実であると考えられ、SNS全盛の現代社会においてさえ、どれ程有名であろうともスキャンダルめいた話が全く出ない人もいる事がそれを裏付けていると言えよう。そして日々伝えられる著名人についての噂話が額面通りではないにしても「これ程高慢と見られる人物が、他人の言う事に真摯に耳を傾ける事等あるのだろうか?」と疑問を抱く方もいらっしゃるであろう。弁護士や公認会計士等、高度専門職と呼ばれる方々の意見になら耳を傾けるかも知れないと思う人もいらっしゃるであろうが、残念ながらそうではないからこそ、セレブ等と呼ばれる事も少なくない彼ら彼女らが一晩にして一文無しになってしまったり、場合によっては逮捕されてしまったりする事さえも現実に起こるのだと考えられる。勿論高度専門職と言えども全知全能ではないので、全てのリスクを前もって回避させる事は不可能であるが、セレブの皆さんが真摯に専門職の方々の意見に耳を傾け、日々の言動を見直す事が出来たならば、少なくとも「最悪の事態」は回避出来たであろうと思うと、実に嘆かわしい限りである。

医師の意見は真摯に聞き入れる可能性は高い

それでは医師の意見ならば聞き入れるのであろうか? 勿論これまで述べてきた通り、セレブと一口に言っても様々な方がいらっしゃるから、医師の意見にも全く耳を貸さない人物もいるであろうし、これまでにもいた事もほぼ間違いない。しかし各種の専門職と比べて医師の意見は真摯に聞き入れる可能性は高いと推測出来る。理由は簡単で、医師の意見を無視した場合に訪れる「最悪の事態」とは文字通り「死」を意味するからである。これまで築いてきた名誉も財産も全て失ったとしても、またすぐに巻き返せると深く信じているお気楽セレブさんも世の中には少なくない様に思う(そんなに世の中甘くはないと身をもって知るのは全てを失って以降なのであろう)が、流石に死んでも一部の少年漫画宜しく生き返る事も容易であろうとまで信じているレベルのお気楽さんであれば、一時期であれ現代社会において栄華を誇る事もないであろうから、殆ど誰の意見も聞き入れない様な高慢な人物であろうとも、医師から健康面の注意を受ければ真剣に耳を傾けて積極的に治療を受ける様になったり、生活習慣の改善に取り組んだりする可能性も高いと言えよう。もっとも医学の専門家たる医師と、場合によっては中学校理科の生物分野の知識さえも怪しいセレブの皆様とでは病気に対する認識も大きく異なり、セレブ本人が大した事ではないだろうと勝手に判断したものの、実は命に係わる重病であったという様な事態も起こり得る訳だが、そこで力を発揮するのがお爺さんお婆さんである医師だと推測出来る。この社会の主人公だと信じている彼ら彼女らが高度専門職以外に耳を傾ける相手がいるのだとすれば父母や祖父母であろう(他方ではどんな他人以上に反発心を覚える相手もいるであろうから「父母や祖父母の一部」と評した方が適切かもしれない)が、お爺さんお婆さんである医師は彼ら彼女らに父母や祖父母が与えるのと類似した安心感や信頼感を与える事が出来、そこから適切な治療へと向かわせる事が出来る可能性も高まると考えられる。「それ程単純なものだろうか?」と訝しく感じている読者の方々もいらっしゃると思うが、その詳細は次回見ていきたいと思う。(続く)

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