新型コロナ影響による医学部学費の変化と、そこから見える戦略

計画,計算

私立大学の学費はもともと金額が高いが、私立大医学部となればさらに高額です。にもかかわらず、新型コロナウイルスによる社会情勢の悪化により、大学病院もあおりを受け、経営悪化しているケースが出てきています。結果的に学費を値上げ・値下げする動きが出始めており、医学部受験生、その保護者の皆様は動向を確認する必要がありそうです。

なぜ経営悪化しているのか

コロナ対策の影響で外来患者数が減少している

日経メディカルOnline調べによると、医師3668人を対象に2020年3月13日~17日にかけて調査を実施した結果、1年前の同じ時期と比べて患者数が減っていると答えた医師は全体の約53%だったとのこと。特に小児科は78%近くが患者の減少を報告しています。

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コロナウイルスの影響で病院を利用する患者が減少し、経営が悪化する病院も相次いでおり、私立大医学部で学費を値上げする動きが出ています。

東京女子医科大が6年間総額約1200万円の値上げ

2021年から東京女子医科大が6年間総額約1200万円の値上げを予定しています。コロナウイルスの影響による東京女子医科大学病院の経営悪化などが指摘されています。

学費変更は文部科学省への届け出をしなければならない手続きです。しかし、基本的には各大学の判断で決めることができます。しかし私立大医学部は、もともと高額な学費がネックで、できるだけ国公立医学部を目指す学生が多いです。
つまり学費は受験生の数に大きな影響を与える要素で、学費の増減による志願者や難易度への影響が大きい。

1200万円の値上げすることで、志願者が減少することは避けられないでしょう。また、複数の大学を併願し、他大から合格をもらった受験生は、学費の安い大学を選ぶことが多く、入学を辞退する合格者が例年より多い可能性があります。
つまり学費の値上げは、「志願者の減少」と「入学者数の予測精度低下」という2面のリスクがあります。
過去の実績として、2020年度昭和大が6年間の学費を約500万円値上げしたことで、大きく志願者を減らしてしまっている。

その分、受験者のハードルを下げ、医学部に入学したい人を囲うために、受験の難易度(偏差値)が下がる可能性が高いです。

金銭的なハードルを乗り越えられるならチャンス

逆に考えれば、「東京女子医科大は受験生が減少して競争率が下がり、合格しやすい大学になる」ということだ。金銭的なハードルは大きいが、これを越えられるであればチャンスと言っても言いだろう。
医学部生は自治体や団体の奨学金で利用できるものが多く、保護者の支援が必ず必要なわけではない。また、医療従事者になってからの収入がサラリーマンより多い可能性が高いので、奨学金の返済目途も立てやすいです。
お金のことは要検討ですが、「医学部に合格する」という一点のおいて、今回の値上げは好機と捉えることが出来ます。

値下げが起こると難関大になる


過去に学費を下げた順天堂大は「難関大」になった
 
学費が大幅に下がると、難易度は上がる傾向がある。順天堂大は2008年に6年間の学費を約900万円値下げした。これにより志願する受験生が急増し、偏差値が上昇、慶應義塾、東京慈恵会医科、日本医科の3大学、いわゆる御三家にも匹敵する難関大となってしまった。

もともと学費面で不安のある学生は、国公立医学部をメインに受験するが、御三家や順天堂を併願して合格した場合、御三家・順天堂を優先して国公立を事態する受験生が多い。
また、学費が下がると受験生の志望校検討範囲に入りやすいため、能力の高い学生を受験に呼びやすくなるメリットもある。

後を追うように値下げする大学が続出

その後も昭和大(一般入試合格者)、東邦大、帝京大、東海大、藤田医科大、愛知医科大で値下げが続いた。2018年には御三家のひとつ、日本医科大が約570万円の値下げをして話題になった。また国際医療福祉大は17年の開学当初から、学費を私立大の最安値となる約1910万円に抑えて人気を博している。

6年間の学費0円、毎月11万円の手当に賞与も2回

しかしなかには、学費ナシ、あるいは低学費になる医学部もある。防衛医科大学校、産業医科大、自治医科大の例を見てみよう。

〇防衛医科大学校

6 年間学費 0円→毎月手当約11 万円+賞与年2回
入学金、および授業料などは徴収されない。学生の身分は防衛省職員(特別職国家公務員)で、毎月約11 万円の学生手当と、年2回の期末賞与が支給される。学費は必要ないが、卒業後9年間は自衛隊での勤務が必要。離職した場合、相応の返済が求められる。

〇産業医科大

6 年間学費 3069万円→ 1130万円(修学資金貸与制度)
入学者全員が対象。卒業後、貸与を受けた期間の1.5 倍の期間(在学6年間貸与を受けた場合は9年間)産業医などの職務に就けば、貸与を受けた全額が返還免除。ただし、卒業後、産業医等の職務に就かない場合、または所定期間勤務しない場合は、貸与を受けた全額を一括返還しなければならない。

〇自治医科大

6 年間学費 2260万円→ 0円(修学資金貸与制度)
入学者全員が貸与契約を締結し、修学資金の貸与を受けられる。大学を卒業後、出身都道府県知事が指定する公立病院などに医師として勤務し、その勤務期間が修学資金の貸与を受けた期間の1.5 倍に相当する期間(その勤務期間のうち2分の1は、知事が指定するへき地等の指定公立病院などに勤務する)に達した場合は、返還が免除される。

自分が描く将来と一致する場合は、受験生にとってもメリット大

ただし、卒業後の一定期間、定められた勤務を遂行するなどの義務がある。
学費が安いからと安易な気持ちで受験することはお勧めしませんが、『地域医療に従事したい』『産業医になりたい』など、自分が描く将来と大学の修学資金貸与制度などが一致する場合は、受験生にとってのメリットは大きいです。そのため、これらの大学の難易度も高くなっています
 
多くの大学で導入されている地域枠は、卒業後の一定期間、地域医療に従事すると、返済が免除になる修学資金がセットになっているケースが多い。たとえば東北医科薬科大は定員の半数以上の55人を対象にした修学資金制度がある。

貸与される修学資金は、10年間程度東北地方の医療に従事することが条件で返還免除となり、実質6年間の負担額が400万~800万円になる。

まとめ

コロナウイルスの影響で今後も学費の値上げ・値下げが発生することが予想される。受験難易度と学費の関係性を理解しておき、どこを挑戦するべきなのか見定める必要があります。
学費が安くなったら、その分頑張らないと合格の可能性が下がりますからね。

四谷メディカルは受験に関わる情報を常に収集し、受験戦略を一緒に考えていきます。大きく変化する社会情勢に飲まれず、確実に医学部に合格したい方、その保護者様はぜひご連絡ください。

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