医学部受験で小論文・面接試験が課される「真」の理由⑨

紙媒体の時刻表の重要性

皆さんは紙媒体の時刻表をご覧になった事があるであろうか? 今私が尋ねているのは文字通り書籍の体裁をなしている時刻表というものを見た事があるか否かという事だけであり、書籍の時刻表を手に取って開いた事があるか、或いはその時刻表を用いて特定の列車の到着ないしは出発時刻を調べた事があるかといった内容までは一切含めていないつもりであるが、それでも冒頭の質問に対してNoと答える現在20 歳前後の受験生の方は少なくないのではないかと思う。もっとも熱心に受験勉強に取り組む皆さんが学習参考書等を購入する為に書店に赴いた際に、余り目立たない棚に表紙が主に鉄道の写真で彩られた、分厚くて大きい本が網膜の片隅にでも映じた経験があったならば、「ああ、あれが時刻表というものなのね」と頭の中で繋がるものがあるかもしれないが、所詮その程度の認識であり、凡そ自分とは縁のない世界の本だと考えているのではないだろうか。

検索サイトに頼りきりになっている

しかし当たり前の事だが、皆さんが鉄道に乗らなくなったから鉄道の時刻表の需要がなくなった訳ではない。インターネットで簡単に鉄道の出発・到着時刻の検索が可能になったからこそ、一般向けの小型の時刻表が出版業界から駆逐されつつあり、先述の通りマニア向けとも言える大型の時刻表が従来通り書店の棚のごく一部を占め続けているのが実情であると言えよう。この様な大型の時刻表を片手に、鉄ヲタは実際に全国を旅しているか、或いはコロナ禍の影響もある為自室で妄想旅行に興じている姿は想像に難くはないが、ヲタクというものが世間一般でどの様な評価を受けているのかという、大変複雑な問題はここでは論じないとして、大型時刻表を携えた鉄ヲタに一定以上のインテリジェンスを感じるのは決して私一人ではないであろう。特に紙媒体の時刻表と格闘した経験がある方であればすぐに分かると思うが、あれだけのページ数のある書籍形態の時刻表から自分に必要なページを迅速に見つけ出すには相応の経験が必須であり、特に乗り換えが頻繁となる事も少なくない都市部の鉄道の発着時刻を調べようとするのであれば、ページを探し出す作業を何回も繰り返す事になるので、大型時刻表を恰も自分の手足の様に使いこなす鉄ヲタに対する憧れを禁じえないからである。その様に感ずる気持ちが年々強くなるのも道理であり、それは崇高な魂を内に秘めた鉄ヲタ以外の我々一般人は、とうの昔に鉄道の発着時間を自分の手で調べるという営為を放棄しており、検索サイトに頼りきるのみになってしまった為であると推測出来よう。

最速で目的地に到達する手段

それでは我々の大部分は検索サイトに出発駅名と到着駅名を入力して「ウッキー!!」と叫び声を上げながら検索ボタンをクリックするのみのお猿さんにまで堕してしまったのであろうか? 残念ながらそのレベルにまで堕している人も現実には少なからずいるであろうし、かく言う私も書籍形態の時刻表を買うのを止めて検索サイトに頼る様になった一時期は、我ながら随分とお猿さんに近づいたものだと嘆じていた事もあった。しかし今の私は交通手段の検索に関して断じてお猿さんではないと胸を張って言える。だからこそまさしく今この瞬間、この内容でこのコラムを書いているとも言えるが、検索サイトはほぼ土地勘のない人間でもそれなりに合理的な時間内に目的地に到達する為の手段を示唆しているに過ぎず、必ずしも最速で目的地に到達する手段を与えている訳ではない事に気がついているからである。それでは最速で目的地に到達する手段は、今なお分厚い書籍形態の時刻表を自在に操る、ある意味ホモ・サピエンスを超越していると言っても過言ではない、一部の鉄ヲタの手中にしかないものなのであろうか? 断じてその様なものでなく、検索サイトを真に上手に使えれば多くのホモ・サピエンスが到達出来る高みであろうと私は信じている。その具体的な手法については次回以降詳述していきたいと思う。(続く)

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