医学部受験で小論文・面接試験が課される「真」の理由⑪

センター試験利用方式に代わる共通テスト利用方式について

今日は現役・一浪位の医学部受験生というよりは、再受験生や大学受験経験のある保護者様ないしは10歳位歳の離れたお兄様・お姉様への質問から始めたいと思う。その質問とは「センター試験利用方式に代わる共通テスト利用方式について、かつて自分が受験したときよりも募集枠が狭まってはいないだろうか?」というものである。
かつてのセンター利用方式というのは便利なもので、1月中旬にたった一度センター試験を受験して志望校に出願しさえすれば、あとは各大学が勝手に合否を判定してくれるという仕組みの所が殆どで、面接を課される医学部等を別にすれば、志望校そのものないしは志望校のサテライト試験場にさえ出向く必要もないのであった。人によっては在籍している高校や塾・予備校の合格実績を稼ぐ為に、全く興味のない学部・学科も含めて、一人で数十校もの出願を強いられたという、笑っていいのだか悪いのだか分からない様な思い出をセンター利用方式に関して持っているかもしれない(勿論この場合の受験料は受験生ではなく合格実績を稼ごうとしている側の負担となるのが標準ではあるが)。この様にきな臭い話も絡んでいたセンター利用方式ではあったが、大部分の真面目な受験生にとってはセンター試験で失敗すれば全てが水の泡となる反面、相応の得点を獲得出来れば併願校受験による時間的・金銭的・精神的負担等を大幅に軽減出来る魔法の杖の様な入試方式であったと評価しても過言ではないであろう。
ところが、先述の通り共通テスト利用方式に引き継がれなかったセンター試験利用方式が全国津々浦々の私大に少なからずある。しかも、公正客観的な評価は後世の入試評論家に譲るとしても、当初より共通テストはセンター試験よりも難易度が高く、思考力が求められる問題を出題する事を一つの目標として掲げており、実際共通テスト2年目に相当する2022年の試験ではセンター試験と比べて平均点がかなり低下した科目が目立っており、それ故これまでよりも難関大学・学部の合格者選抜にも適した内容になってきていると評価出来る。

共通テスト利用方式が減少傾向にある理由

しかし実際には共通テスト利用方式が減少傾向にあるのだから、その理由は他に求めねばなるまい。実際共通テスト導入を待たずして廃止となったセンター利用方式も少なからずあるのは、センター利用方式による合格者の歩留まり率が余りにも悪かった為であると言えよう。先述の通りセンター利用方式は余りにも簡単に受験(「登録」位の方が適切な表現かもしれないが)出来るので、合格実績稼ぎの様な特異なケースを別にしても、その大学に余り(「殆ど」ないしは「全く」の方がこの場面により相応しい副詞かもしれないが)愛着のないまま出願し、第一志望校に合格した場合に入学を辞退するのは言うに及ばず、そこが唯一の合格校であった場合でさえあっさり蹴って浪人を選ぶケースすら少なくは無かった様に思われる。この為、誰もが知るレベルの有名難関私大であろうとも、センター利用方式に限定すると歩留まり率は数パーセントに過ぎないという事も決して珍しくはなく、文字通りゼロとなってしまう事さえあったのだ。これでは入試を実施する意味がないので、実施校が次第に減少していったのも道理であると言えよう(もっとも単に受験料で多くの収入を得る事だけを目標とする大学であれば、この上もなく効率の良い収益アップの手段であるから、歩留まり率なんぞに気を留める事もなく、センター試験・共通テスト利用方式をこれでもかと言わんばかりに増やしまくって今日に至っている事もまた道理と言えるが)。従って21世紀に突入して20余年にもなる現代においても、やはり試験場に出向くという行為そのものが大学への愛を示しているのは真理であると言え、その結果として単純な共通テスト単独の利用方式は減少しても、大学独自の個別試験と組み合わせた共通テスト併用方式(勿論これも広い意味では共通テスト利用方式に他ならないのであるが)であれば、前身に当たるセンター試験併用方式も含めて増加傾向にある事は間違いない。それでは大学への「愛」とは一体何なのか? いよいよ次回は特に医学部入試に絞って見ていきたいと思う。(続く)

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