近畿大医学部センター利用方式の後期とは
文系受験生にとって最も併願しやすい医学部入試と言って間違いなかった近畿大医学部センター利用方式の後期とは一体どの様な入試であったのだろうか? 実は来年実施予定の近畿大学医学部共通テスト利用方式と、ただ一点を除けば入試の内容は殆ど変化していないのである。勿論21世紀が始まるか始まらないかの頃と比べれば、英語のリスニングテストが必須になったり、理科の出題範囲が全範囲になったりといった変化も見られる事は紛れもない事実であるが、これらはセンター試験乃至は共通テスト側の変更の影響を受けているに過ぎず、近畿大による積極的な変更とは言い難いものばかりである。もっとも理科基礎の選択を許せば現行の共通テストにおいても理科各科目の全範囲を課さずに済むのも真理ではあるものの、嘗てのセンター試験における出題範囲であった旧理科ⅠB或いは理科Ⅰと比べても出題範囲がかなり狭い理科基礎を、今や理系のトップ学部と称して間違いないであろう医学部で課すのは現実的とは言えず、後述する様に文系受験生が医学部を受験したいと思った際にも、理科の所謂専門科目しか選択出来ない事が乗り越えるべきハードルの一つとなるとも考えられない事情もあるのである。
共通テストで課される科目
もったいぶらずに近畿大医学部共通テスト利用の後期の、共通テストで課される科目を具体的に挙げていけば、英語が必須で、国語(現代文のみ)・数学ⅠA・物理・化学・生物から2科目選択、たったこれだけである。従って一般的な私立医学部受験生にとっては、数ⅡBⅢや、理科の一方の科目が非常に苦手であったとしても一発勝負を懸けられる試験として非常に魅力的に感じられるであろうし、他方で国公立文系志望の受験生にとっては、英・国・数ⅠAで受験する限り一切科目的な負担を増やす事なく受験する事が可能となる(従って先述の通り理科の出題範囲が時代により変遷しても、例外的に理科が得意な受験生を除けば、国公立文系志望者に大きな影響はないと見られるのである)ので、特に「医学部にも合格した」と言いたいが為だけに受験校を検討している文系受験生であれば、この上ない程の魅力を感じる事であろう。そして双方ともに譲れぬ思いを抱いてぶつかる、ある意味異種格闘技の様にも見えるこの勝負であるが、少なくとも世紀の変わり目頃は後者、つまり医学の学習や医師の仕事には凡そ興味がない文系受験生の方に軍配が上がる事も珍しくはなかった様に思う。この選抜方式は募集人員が2名程度と非常に少ない事も昔から変わっていないが、合格者数が少ないが故に予備校の併願対決データも発表される年度とされない年度があったものの、発表されているデータに着目すれば、併願校として「東大文一」が挙がっている事も少なくはなかった。
両親からのマウント取り
そして前回から何故か東大文一の名前が度々挙がっているのも、私が文一に対して何か私怨を抱いているといった理由によるのではなく(まあ、私にとって東大文一は4歳の頃から高校2年生の秋まで長きに亘る現実的な第一志望であり、未だ合格を果たしていない事は正直に認めるが、だからと言って文一に対して即コンプレックスを抱く程人間というものは単純ではない事は、大人な読者の皆さんには自ずと理解されよう)、この併願対決データに基づいているのであり、近畿大医学部センター利用方式の後期に合格した事をもって「お父さん(お母さん)は、実は医学部にも合格した事があるんだ」と語り掛け、大学受験が近づきつつある我が子に対して、過去の実体験から得られる教訓を伝えているというよりは寧ろマウント取りをしているだけの、東大文一出身者であるお父様・お母様はやはり実在するであろうという推測は十分に成り立つのである。勿論、合格者数の少なさ故にボーダーラインは極めて高い事は間違いない(センター試験が簡単な年度の場合、3科目何れもほぼ満点でなければ合格は不可能であったと考えられる)ので、最終的に東大文一に余裕で合格するレベルの受験生であっても「返り討ち」に遭うケースも少なくはなかったと考えられるが、逆を言うとセンター試験で高得点を取れさえすれば、二次試験も何もなく無条件に合格出来たのであるから、やはり東大文一を始めとする国公立文系トップ層の志望者で、医学部合格の栄誉をも求める受験生にとっては、これ以上ない程魅力的な選抜方式であった事は論を待たないであろう。
医学部メインで受験している訳ではない受験生にとっての負担
しかしこれも昔話に過ぎず、ほぼ唯一にして最大の変更点である、小論文と面接から構成される一般的な二次試験も課される様になった事によって、学科試験の構成が殆ど変化していなくとも、医学部メインで受験している訳ではない受験生にとっての負担は大きく増大している訳であるが、この学科試験の構成は「あの医学部」に類似していると思っている方もいらっしゃるであろうと思われる。そこで次回は「あの医学部」の入試についても考察し、医学部入試の秘められた課題について迫っていきたいと思う。(続く)