帝京大学医学部の入試
帝京大学医学部、それは多くの医学部志望者にとってある意味最も夢とロマンに満ち満ちた入試を実施している医学部と称して過言ではないであろう。医学部志望者の皆様に改めて説明する必要はないかも知れないが、学科試験は英語こそ必須であるものの、それ以外は国語(現代文のみ)、数学(ⅠAⅡBのみ)、物理、化学、生物の中から任意の2教科乃至は2科目が課されるのみである。実は今から5年程遡ると、英語も必須ではなく選択であり、上述の教科・科目の中から単純に任意の3教科乃至は3科目を選択すればよいという、真に自由な入試科目の構成であった(つまり理論上は理科3科目だけで受験する事さえ可能だったのである!! 実際にその科目選択をした受験生がどれだけいたのかは定かではないが……)事と比べると、現状は英語が非常に苦手な受験生にとっては少々残念な入試となってしまった事は否定しがたい事実ではあるが(英語だけが必須教科に格上げされた真の理由については、また機会を改めて語りたいと思う)、それでも単純に科目数が、他の多くの医学部の入試と比べれば単純に一科目少ない為、苦手科目での受験を避けて相対的に得意科目の比重を大きくする事が可能となるのみならず、先述の通り数学を選択したとしても数Ⅲが課されず、また現代文のみの国語の選択も可能である為、凡そ私立医学部の受験とは縁のなさそうな科目構成で勉強している、私立の歯・薬・看護・農学系の志望者や、私立文系志望者で数学を選択している受験生までもが受験出来る様に十分な配慮がなされているとも考えられる。従ってこれを「夢の様な入試」と形容せずして、他のどの入試をこの様に形容すればよいのかと疑問に思わないではいられないレベルだと結論付けられよう。
医学部を真剣に志す皆様からすると少々厄介な受験者層
しかしこれだけ自由度の高い入試であると、本コラムの熱心な読者である皆様は、彼ら・彼女らが流入して来るのではないかと懸念するのではないだろうか? 彼ら・彼女らとは、言うまでもなく前回まで熱く論じてきた、医学部に入学する気は毛頭ないが、専ら医学部に合格したと言いたいが為に医学部を受験する、医学部を真剣に志す皆様からすると少々厄介な受験者層である。帝京大学医学部入試の受験を要する科目数少なさ並びに選択の自由度の高さは医学部志望者の間のみならず、大学受験一般を考えてもかなり有名であるから(ただ文系科目の講師がしたり顔で「帝京大医学部の入試では社会も選択出来る」と声高に喚き立てるのは同業者としては本当に止めて欲しいとは思うが……。帝京大の他学部の入試と混同している事に一刻も早く気がついて欲しいものである)、彼ら・彼女らの中にも帝京大医学部に興味を持つ人は少なからずいるであろうし、当然の事ながら実際に受験している人も例年の様にいる事であろう。しかし事情は前回まで論じてきた近畿大学医学部の嘗てのセンター利用入試後期とは大きく異なっており、必要科目数が少ないだけでも人気がある上に、募集人員が最も多いメインの選抜方式であり、8000人もの受験生を集める程であるから、縦令東大文一との併願者がいたとしても、予備校の集計した、併願者数が多い上位10校程度のみを掲げた併願対決データに併願大学・学部の名前として「東大文一」が挙がる可能性はほぼ皆無であると言えよう。
板橋のキャンパスのみで実施される二次試験のハードル
この様な結果になるのは大学、更には学部まで細分化している為であり、国公立文系学部との併願者といった大きな括りで見れば相当数の受験生が帝京大医学部を併願しているのではないかという推測も一見すると成り立ちそうではあるが、事情はそれ程単純ではなさそうである。一般選抜である以上、一次の学科試験であっても大学独自の試験場まで赴く必要がある上に、帝京大医学部の場合は一次試験でも地方試験場は設けておらず、板橋のキャンパスのみでの実施であるから、首都圏以外の地域に住んでいる受験生が、医学部に合格したと言いたいというだけの理由で受験に来る可能性はほぼゼロまで下がるであろう(寧ろ受験生本人は受験したいと言い張るかもしれないが、スポンサーである保護者様が許可する可能性がほぼ皆無であるといった方が適切な表現と言えよう)が、更に大きなハードルがやはり板橋のキャンパスのみで実施される二次試験であると推測出来る。次回は帝京大学医学部一般選抜の試験内容の変遷にも注目しながら、いよいよ小論文・面接試験の真の意義について考察していきたいと思う。(続く)