医学部受験で小論文・面接試験が課される「真」の理由⑫

圧倒的に募集枠が増加している系統

前回は次第に募集枠が減少しつつあるセンター試験利用方式とその後継に当たる共通テスト利用方式について考察してきたが、一方で20年前と比べて圧倒的に募集枠が増加している系統がある事にお気づきであろうか?その系統とは言うまでもなくこのコラムを読んでいる大多数の皆さんにとって第一志望に相当するであろう、医学部医学科である。20年前という事で私と同年代のアラフォーかつ嘗て医学部を志した皆さんであれば、鮮明に記憶している事だろうと思うが、20世紀から21世紀への変わり目の辺りで、センター利用方式を課していた私立医学部といえば、慶應義塾大学と近畿大学のただ2校のみであった。そして現在医学部入試に立ち向かおうとする皆さんの感覚であれば、10年程前にセンター利用入試を全廃した慶大が、間違いなく看板学部の一つと言える医学部においてセンター利用入試を実施していたという事実には、拭い難い違和感を覚えるかもしれない。しかしその違和感は的を射たものであり、このセンター利用入試は形式的にはセンター試験の結果を利用してはいたものの、実質的には一般入試であったからである。

この時代の慶大医学部一般入試の受験にはセンター試験の英語の受験が必須

年寄りの昔話で文字数を浪費するのも宜しくないのでどういうことであったかを手短に説明すると、この時代の慶大医学部一般入試の受験にはセンター試験の英語の受験が必須であり、一次試験の合否判定時には個別試験の英語の成績にセンター試験の英語の結果を加味するという少々複雑な仕組みを取っていたのである。従って予備校等の分類に従えば広義のセンター利用入試に分類されはするものの、受験生の認識としては一般入試に他ならず、私立医学部専願であろうともセンター試験の受験が必須である上に合否判定の回数が増える訳でもないという大変厄介な代物であった。しかもセンター試験の英語の成績が加味される比率については一貫して公表されていなかったので、センター英語で思う様な得点が得られなかった受験生は「個別試験でどれだけの高得点を収めたとしても最早合格は不可能ではないだろうか?」と思い悩む事はしばしばあり、それ以前の問題として私立医学部専願の自分にとってはセンター試験の受験は不要だと思い込んでセンター試験を受験せず(或いは出願すらせず)、結果として多くの私立医学部受験生にとって第一志望として位置付けられるであろう、慶大医学部への挑戦すら叶わずに受験を終えたという苦い思い出をお持ちの方もいらっしゃる事であろう。

慶大医学部入試におけるセンター利用は大分前に姿を消した

従ってこの時代の私立医学部におけるセンター利用方式は実質的には近畿大1校のみであったと評価出来るが、慶大程ではないにせよこちらも少々厄介な要素を孕んだ選抜方式であった事も紛れもない事実である。そして様々な意味での厄介さと、センター試験の英語のみを利用するという意図の不透明さに包まれた、慶大医学部入試におけるセンター利用は大分前に姿を消し、令和の今になって共通テスト利用という形で復活を遂げる事はまずないであろうと推測出来るので、こちらについてはこれ以上の議論の価値は認められない(未来へ向けて生きる受験生ではなく、私の様な懐古趣味の年寄り連中だけが議論していれば良いテーマであると言えよう)が、近畿大の方は選抜方式の面で多少の変更を経てはいるものの、現在も実施のある共通テスト利用方式に引き継がれている上に、数多の医学部医学科のセンター試験・共通テスト利用方式のプロトタイプになったとも評価出来るので、この選抜方式から考えるべき事は、現代の必ずしも近畿大医学部に興味のない受験生にとっても決して少なくはない様と推測出来る。そこで次回は医学部医学科に関して、20年程前のセンター試験利用方式と、現代の共通テスト利用方式との共通点並びに相違点を中心に検討していきたいと思う。(続く)

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